極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「それで、香奈ちゃんとはいつから一緒に暮らしはじめるの?」
「明日、引っ越してくる予定だ」
「そうなのね」
顎を軽く上げ、ふーんといった様子で小刻みに頷きつつ、ぼそっと呟く。
「……よかった」
「なにが?」
かろうじて聞き取った彼女の言葉を拾って問いかける。
柚葉は軽く息を吸い込み、目を見開いた。
「あ、早めに来られてよかったって意味。こういうのってスピーディーなほうがいいでしょう?」
海里はスピード勝負とは思わないが、そういうものなのか。
「ともかく私は早く渡したかったの」
「気を使わせて悪かったな。そろそろタクシーを呼ぼう」
「そんなに早く追い返さなくてもいいのに」
柚葉が恨めしげに呟いた言葉を聞こえないふりして、玄関のドアを開ける。外へ出るよう促した。
「コンシェルジュにタクシーを呼ぶよう連絡を入れておく」
「ありがとう。でも自分で拾えるから大丈夫」
柚葉は口元にだけ笑みを浮かべ、手をひらりと振ってエレベーターのほうに歩いていった。