極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
そう必死に否定するが、ふたりは以前、恋人同士だった。それも駆け落ちまで考えるほど深い愛情で繋がっていた。
その事実が香奈の否定を邪魔する。
香奈との結婚は彼女を忘れるためのもの。しかし人の心は、そう簡単に変わるものでないのは身をもって知っている。
(私と結婚はしたけど、想いを振りきれなくてここで逢瀬を重ねていたの?)
疑いたくはないが、このイヤリングがすべてを物語っていた。
目の前が真っ暗になり、その場にペタンと座ったまま立てなくなる。
結婚さえすれば、問題は解決すると思っていた。近い将来、海里はきっと香奈を好きになってくれると信じていた。
ここ最近の海里の言動が、見つめる眼差しが、香奈に自信をつけさせていたのだ。
でも現状はまるで逆。香奈を好きになろうと努力すればするほど、柚葉への気持ちが募っていったのかもしれない。
初夜にそれを思い知らされるとは――。
寝室のドアが開き、海里が現れた。
「香奈、そんなところでどうした」