極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
近づいてきた海里が香奈の両肩を抱き、そっと立ち上がらせる。
咄嗟にイヤリングごと手をパジャマのポケットに突っ込んだ。
「海里さん、あの……」
ポケットの中で握りしめたイヤリングがぎりっと軋む。
香奈の顔を覗き込んだ海里の目も見られない。
「香奈?」
今ここでイヤリングを突き出したら、香奈たちはきっと終わる。優しい海里のことだから、香奈をこれ以上傷つけられないと考えるだろう。
そう思うと、彼を問い詰める勇気は出ない。彼女との痕跡を見せつけられてもなお、海里との未来を諦めきれずにいた。
「ごめんなさい……」
「やっぱり無理か」
海里がぽつりと呟く。
無理とはいったいどういう意味なのか。海里の顔を見上げた。
憂いを帯びた眼差しは、香奈ではないどこか遠くを見ている。