極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「いないよ。おねえちゃんが結婚したから、次は私だってお父さんが張り切ってる」
 「まだ二十六歳なのにね」


 ふたり揃って苦笑いを浮かべる。


 「そうなの。おねえちゃんがもっと粘ってくれればよかったのに」
 「意外と呆気なかったものね。ごめん」


 恨み節の入った深優に手を合わせて謝る。


 「ということで、ここはおねえちゃんの奢りで!」
 「もうっ、ゲンキンなんだから」


 もちろん最初からそのつもりで誘ったのだけれど。
 ピザ風フォカッチャを皿に取り分け、深優に渡した。


 「いただきます」


 フォークを手に取り、同時に口に運ぶ。
 迷いは吹っ切れたから、あとは実行に移すだけ。
 たとえ海里の話が別れに繋がるものだとしても、今まで募らせてきた彼への想いだけは伝えたい。
 その夜、香奈は【私も海里さんに話したいことがあります】とメッセージを送った。
< 237 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop