極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「いないよ。おねえちゃんが結婚したから、次は私だってお父さんが張り切ってる」
「まだ二十六歳なのにね」
ふたり揃って苦笑いを浮かべる。
「そうなの。おねえちゃんがもっと粘ってくれればよかったのに」
「意外と呆気なかったものね。ごめん」
恨み節の入った深優に手を合わせて謝る。
「ということで、ここはおねえちゃんの奢りで!」
「もうっ、ゲンキンなんだから」
もちろん最初からそのつもりで誘ったのだけれど。
ピザ風フォカッチャを皿に取り分け、深優に渡した。
「いただきます」
フォークを手に取り、同時に口に運ぶ。
迷いは吹っ切れたから、あとは実行に移すだけ。
たとえ海里の話が別れに繋がるものだとしても、今まで募らせてきた彼への想いだけは伝えたい。
その夜、香奈は【私も海里さんに話したいことがあります】とメッセージを送った。