極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「ミナトに話すようなことはなにもない」
「冷たいなぁ。こっちはなんとか収拾がついたし、早く帰ってあげたら? 俺はちょっと寂しいけどね」
「言われなくても、今日にはこっちを発つつもりだ」
海里が急遽ここへ来たのは、EC業界第三位のシェアを持つ企業から敵対的買収を仕掛けられたためだった。
アミュゼの株式の保有比率を増やして買収を図ろうとしたため、あらかじめ定めておいた条項により新株を発行し、相手企業の保有比率を下げることに成功。いわゆるポイズンピルという手法により買収を阻止した。
センセーショナルなTOBのニュースはこちらでトップに扱われ、一時はこのビルにも報道陣が詰めかけた。
「ともかくミナトも疲れただろう。帰って休むといい」
ここ連日、ろくに睡眠もとらず対応に追われていた。
「海里も同じじゃないか。今日帰国にしないで、今夜はゆっくり休んで明日帰ればいいのに。……って、早くかわいい新妻に会いたいか」
海里に再度睨まれ、ミナトは「スミマセン」とわざとらしく片言の日本語を使って退室した。