極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 頭を下げたまま呟いた声は、聞き取るのもやっとなほど小さい。


 「……嘘?」


 海里の眉間に深い皺が寄る。不快感丸出しの表情だ。
 香奈は話が全然見えず、海里と真司を交互に見た。


 「香奈と付き合うことになったっていうのは嘘だったんです」
 「私と付き合うってなんのこと?」
 「香奈、ごめん。八雲さんにチョコレートは渡してない」
 「……え?」


 頭の中が真っ白になる。真司の言葉をまったく理解できない。

 (海里さんにチョコは渡してない……? それじゃ、海里さんが受け取らなかったっていうのは?)

 信じられない思いで真司を見た。

 それは海里も同じようで、怒りとも悲しみともつかない複雑な表情をしていた。


 「岩井、お前にはすべてを話す義務がある」
< 250 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop