極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 右手で顔を撫で、髪をかき上げた海里が深く息を吐き出す。


 「俺はともかく、香奈を傷つけたのは許せない」
 「本当にすみません」


 真司はさらに肩を丸めた。


 「悪いが、今は謝罪を受け入れられない」
 「わかってます。悪いのは全部俺ですから」


 海里はきっぱり拒絶するが、真司はそれも許容する。すべてを明るみにし、怒りを受け止めるつもりなのだろう。


 「ずるいぞ。そうして殊勝な態度を見せられたら闇雲に怒れないだろ」
 「怒っていいんです。九年間も騙していたんですから。香奈ももっと怒ってくれ。なんでちゃんと渡してくれなかったんだって。どうして柚葉さんと付き合うって嘘をついたのかって」
 「……もう十分怒ってるよ。だけど今さら過去は塗り替えられないもの」


 真司に懇願され、淡々と返す。

 今ここで感情に任せて怒りをぶつけたところで、なにも変わらない。香奈が立っているのは過去ではなく、今なのだから。
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