極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「そんな事実はない。柚葉はただの幼馴染だ。俺がお見合いを申し入れたのは、香奈を素早く確実に手に入れるため。地位と名誉を盾に外堀から埋めて、とにかく早く捕まえたかった。誰かを忘れるためなんかじゃない」


 だとすれば、柚葉まで香奈に嘘をついたのか。香奈の前で涙ぐんだのは演技だったのか。


 「今の感じだと、香奈に忘れられない男がいるっていうのも柚葉の嘘だったんだろうな」
 「……私に忘れられない男の人が?」


 それを言うなら海里がその〝忘れられない男〟にあたるが、きっとべつの人物を指しているのだろう。


 「柚葉は、それが岩井だろうって」
 「えっ、高校のときから友達以上に思ったことは一度も……」


 柚葉が海里にそんな嘘を吹き込んでいたとは信じられない。
 香奈には海里とは元恋人のように振る舞い、海里には香奈の心はべつにあると思わせていたというのか。

 香奈も海里も、真司と柚葉にすっかり騙され、振り回されていた。
< 257 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop