極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 そこまで言って、海里は目を細める。


 「……まさか、あのとき」
 「心あたりが?」
 「前日、結婚祝いにワインを持ってきた柚葉にトイレを貸したんだ。ちょうどそのとき香奈から電話があって、俺の気が逸れた隙に寝室に入ったんだろう」


 柚葉は、香奈を揺さぶるためにイヤリングを仕掛けたに違いない。海里を好きだから、ふたりの仲をどうにかして裂きたかったのだ。


 「香奈、嫌な思いをさせて悪かった」
 「どうして海里さんが謝るの」
 「こんなものが落ちてたら、そりゃ初夜どころじゃないよな。岩井のことをどうしても忘れられなくて拒んだのかと思うなんて、見当違いもいいところだ」
 「私こそ、ごめんなさい。結婚したのに柚葉さんと会っていたんだって、海里さんを疑いました」


 あの夜、素直に問いただせば、すんなり解決していただろう。しかし、香奈も海里も相手を失うのが怖くて、今一歩を踏み出せなかった。

 海里はゆっくりと体を向け、香奈の手を取る。


 「疑って当然だ。だが香奈、これからはもうなにがどうあっても俺を信じてくれ。俺は香奈以外の誰にも心を揺らさない。香奈しか欲しくないんだ」
 「海里さん……」
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