極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
二十二歳にもなれば、おそらく恋だって経験済み。スペックの高い彼なら、綺麗な女性たちを相手にしてきただろう。
たかだか『素敵だと思うよ』と言われたくらいで動揺する、子どもじみた反応を激しく悔やむ。
(たまたま会っただけの人にどう思われようと関係ないのに……。私、どうしちゃったの?)
自分で自分がわからないまま、波打ち際までやってきた。波は静かに打ち寄せては返していく。
水をたっぷり含んだ白い砂に足跡をつけ、香奈も波の真似をして行っては戻る。
きっと香奈がこうして波と戯れているうちに、海里は会場へ戻るだろう。落とし物が見つかったのだから、それでおしまいだ。
ちょっとした寂しさを覚えたが、気のせいだと思いなおした。
ところが、香奈の予想は見事に外れる。寄せてきた波から逃げようと振り返った瞬間、海里にぶつかった。
「ごっ、ごめんなさい」
まさかいるとは思いもしなかったためバランスを崩し、彼に腕を取られる。抱き留められる格好になり、その弾みでイヤリングが手から滑り落ちた。
「また失くす気か」