極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 ドアを大きく開け放ち、柚葉が変わらない美しい笑みを浮かべる。なんの穢れも知らないような表情をする人が、あんな大それた嘘をついていたことが未だに信じられない。海里と香奈のふたりを同時に騙していたなんて。


 「それで、今日はどうしたの?」


 ゆったりと小首を傾げた彼女の前で、香奈はそっと手を広げた。例のイヤリングが日差しを浴びて輝く。


 「これ、柚葉さんのものじゃないでしょうか」


 瞬間、柚葉は口元を押さえ、眉尻を下げた。沈鬱な面持ちをしながら、目の奥がかすかに光る。


 「私たちのマンションに落ちていたんです」


 そのときの光景が頭を過ったが、今はそれくらいで傷ついたりしない。海里と心を通わせた自信が、香奈を強くしていた。


 「ごめんなさい、香奈ちゃん。私たち、やっぱり離れられないの。香奈ちゃんという人がいながら、気持ちはどうしても止められなくて」


 柚葉は唇を噛みしめ、声を震わせた。
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