極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 たぶん彼女は、こういう展開になることを想定していたのだろう。イヤリングを見つけた香奈はそれを持って柚葉の前に現れ、離婚をほのめかすと。柚葉の描いたシナリオ通りに動いてくれると期待して。


「でも、海里さんは身に覚えがないと言っています」
「……海里くんに見せたの?」
「はい」


 自信を奪われた香奈なら、海里には話さないと高を括っていたのかもしれない。
 すぐには言い出せず、しばらく悩まされていたのは事実だ。その点に関して言えば、柚葉の目論み通りである。

 柚葉はしばらく思案するように瞳を揺らしてから口を開いた。


「それは香奈ちゃんを傷つけないためなんじゃないかと思うわ」


 あくまでも自分のストーリーを貫くつもりのようだ。


「それじゃ、海里さんは私に嘘を?」


 深く頷く柚葉の視線に迷いは見えない。
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