極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
思い出を守るため


 波乱の夏が過ぎ、季節は秋。柚葉との決別から三カ月が経った。

 図書館の窓から見える公園の木々も色づきはじめ、透き通った空は高い。

 海里は相変わらず忙しくしているが、どうしても現地で対応しなければならない仕事でない限りリモートで対応。香奈をなるべくひとりにしない気遣いがうれしい。
 たまに都合がつくときには香奈も彼に同行して、海外でのサポートを楽しんでいる。

 来春予定されている結婚式の準備も少しずつはじまり、先日は海里の父がデザインしたウエディングドレスがひと足先に完成したばかり。各界から多くの人を招き、盛大な披露宴になるだろう。

 言の葉ライブラリーが閉館の危機に晒されているのは変わらず、職員の間にも動揺が広がっている。業務の移管先が見つからなければ、年明け早々にも正式に閉館だと聞く。
 今日は閉館時間を繰り上げると館長から達しがあった。なにやら発表があると聞いたから、おそらくその話だろう。

 (とうとうここの閉館が決まっちゃったのかな)

 職員の中にはそろそろ就活が必要かもしれないという声もちらほらあり、香奈も気持ちが落ち着かない。
 ここは、子どもの頃から香奈の大切な居場所のひとつだった。ほんの数カ月とはいえ、海里と一緒に過ごした思い出の場所でもある。
< 272 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop