極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
その日の午後四時、香奈をはじめとした職員たちは普段、読み聞かせの企画などで使っている館内の一室に集められた。
教室型に並べられた長机のひとつに凪子と並んで座る。
「ここ、本当になくなっちゃうのかな」
「やっぱり継続は厳しいのかもね」
集まった職員たちは誰も彼も不安そうに囁き合った。
次の職場を考えている人もいる中、香奈は言の葉ライブラリー以外の図書館で働く自分をどうしても想像できない。本が好きならどの図書館でも同じだろうと言う人もいるかもしれないが、本だけでなく、香奈はこの場所が好きだからだ。
(私、わがままなのかな……)
でも、誰にだって譲れないものはあるだろう。それが香奈にはこの図書館だっただけだ。
(まだどうなるか決まったわけじゃないんだもの。悲観するのはやめよう)
自分に言い聞かせていると、館長の飯田光正が入ってきた。ビン底眼鏡に隠された表情は伺い知れない。いつもしていないネクタイを着用しているせいか、どことなく真剣な様子が漂い、香奈たちに緊張が走る。
「お待たせしました」