極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「よく似合ってる」
「あ、りがとう……ございます」
たどたどしく返して目線を上げていくと、どことなく甘さを帯びた目とぶつかった。
緊張を強いられ、体が強張る。視線を外そうとするのに、海里の真っすぐな眼差しに捕らえられていた。
息を詰め、全神経を彼に注ぐ。波の音も潮風も止み、ふたりだけの世界にいるよう。
「香奈」
囁くような声で海里に名前を呼ばれ、緊迫感が最高潮に達したそのとき。
「海里くーん……海里くーん、どこー?」
遠くから海里を呼ぶ女性の声が聞こえてきた。
ピンと張った糸が突然ぷつんと切られ、揃って視線を泳がせる。
香奈は身じろぎをして取り澄まし、海里は声がしたほうに振り返った。
ザッザッと砂を踏みしめる音が近づき、人の気配が迫ってくる。ドクンドクンと心臓が音を立ててうるさいほどだった。