極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
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 日本からプライベートジェットでおよそ十一時間。海里と香奈の姿は、コバルトグリーンに輝くラグーンの水上チャペルにあった。

 日没に合わせてはじまったセレモニーは、神父と数人のスタッフのほかには誰もいない、まさにふたりだけのもの。あたり一面は夕焼けに染まり、ロマンティックな光景にため息が漏れる。

 ル・モネのデザイナーである海里の父がデザインしたウエディングドレスは、浅めのハートカットトップに細かい刺繍が施され、滑らかなシルクチュールのスカートシルエットがエレガントな印象を見せる。ロングトレーンで歩くたびにエレガントなレースがさり気なく見えるのもポイントだ。

 自分の父親ながら、香奈にとびきり似合うドレスをデザインする彼を海里は心から尊敬する。香奈はいつだって可憐で美しいが、今日はその魅力を存分に引き出されていた。
 その姿は景色同様、視線を否応なく奪い、胸を甘くときめかす。

 (香奈は驚いていたが、今日こうしてふたりだけの式を敢行してよかった。こんなに綺麗な香奈を俺ひとりで独占できるんだから)

 刻一刻と暮れていく空の色が彼女を妖艶に映しだし、ベージュのショールカラータキシードに身を包んだ海里の体を熱くさせた。

 聖書の言葉を引用した誓いの言葉が、神父により英語で紡がれていく。
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