極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです～私、振られたはずですよね？

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　「香奈、こっちへおいで」


　物思いに耽っていた香奈を九年後の現実に呼び戻したのは、父、邦夫の声だった。

　飲み終えたシャンパングラスを持ったまま遠い記憶に飛んでいた香奈の耳に、会場内の喧騒が飛び込んでくる。眩しいほどの華やかさは、豪華なシャンデリアのせいばかりではない。九年前と同じく、男性も女性も一流と言われる階級の人たちが集まっている。

　邦夫は少し離れたところで、三十歳そこそこの背の高い男性と話していた。
　グラスをウエイターに預けて父のもとへ急ぎ、取り澄まして会釈する。


　「こちらはね、香奈……」


　どこそこの会社の御曹司だと、邦夫が男性について説明をはじめる。大学ではなにを専攻していたか、今はどんな仕事をしているか。
　その男性との会話が終わると、またべつの男性へと移っていく。次から次へと紹介され、何人かすると誰が誰だかわからなくなった。


　「どうだ、香奈。いいと思う男性はいたか？」


　邦夫が声をひそめて尋ねる。どことなく期待に満ちた目は輝いていた。