極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 女性は大きく息を吐き、胸を撫で下ろす。


 「それは大切なものですよね。見つかってよかったです」
 「本当にありがとう」


 女性はイヤリングごと香奈の手を握った。とても柔らかくあたたかな手だ。


 「私もここで、イヤリングを失くしたことがあったんです」
 「そうだったのね。それで見つかったの?」
 「はい、これなんです」


 香奈は自分の耳を指差した。あのときと同じイヤリングを今日も着けている。


 「まぁそう。素敵なイヤリングね。あなたも失くさずに済んでよかったわ」
 「はい」
 「本当にありがとう。心から感謝するわ。これからのあなたにたくさんの幸せがありますように」


 女性は優しくそう言って穏やかに微笑み、背を向けた。
 香奈も会釈を返して見送り、ビーチに向かう。

 (見つかって本当によかった。結婚記念日のプレゼントなんて、本当に大切なものでしょうし)
< 36 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop