極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 動揺など全然していないふりを装いたいのに、目線はあちらこちらに揺れ、言葉もそれきり出てこない。懐かしさと切なさが入り混じり、感情はぐちゃぐちゃだ。
 恋人だったわけではない。完全に香奈の片想いだった。それでも大好きだった人の登場に狼狽する。


 「少し話さないか?」
 「はい、少しなら」


 迷いもせずに応じたくせに、彼に言われたから話すだけ、本当は時間がないんだけどというのを匂わせたのは香奈のささやかなプライドである。

 海里と並んでデッキチェアーに腰を下ろした。背筋は伸ばしたまま、膝の上で両手を揃えてかしこまった状態。出会った当時と光景が重なり、心は大きく揺さぶられる。


 「久しぶりなので照れますね」
 「だな。元気だったか?」
 「……はい」


 出会った日がつい昨日の出来事のように感じるのに妙な間が空き、空白の月日の重さを思い知る。ぎこちなさは否めず、居心地の悪さを感じずにはいられない。
 この空気をどうしようかと、海のほうを向いたまま彼を横目でチラッと見る。すると海里がちょうど香奈に顔を向けたため、ばっちり目が合ってしまった。
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