極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
もう少し話していたかったと感じたのは、きっと香奈だけ。海里はそんな感傷的な気持ちにはならないだろう。
「貸して」
「え?」
「パンプス。裸足で戻るつもり?」
「いえ、履きますけど」
香奈が戸惑っているうちに海里がパンプスを奪う。砂を払って跪き、そっと香奈の足元に置いた。
「足、出して」
海里の手が香奈の足に伸びる。
「えっ、大丈夫です。自分でできますから」
砂を払おうと言うのだろうが、そんな真似までさせられない。抵抗して膝を折り曲げたが――
「いいから、ほら」
半ば強引に砂まみれの足を取り、海里が丁寧に払っていく。優しい指先が触れるのに合わせて弾む鼓動がうるさい。