極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 海里は最後にパンプスまで履かせ、香奈の手を取り立ち上がらせた。


 「行こう」
 「……はい」


 握られた手はすぐに解け、余韻だけが残る。
 海里の背を追って戻った会場は、先ほどと変わらず華やかなムードに満ち溢れていた。


 「それじゃ、ここで」
 「ああ、またな」


 たぶん香奈たちに〝また〟はない。儀礼的な挨拶で別れ、香奈は父の元へ向かった。


 「香奈、どこへ行っていたんだ? なかなか戻らないから心配したんだぞ」
 「ごめんなさい。ちょっとロビーで休んでたの」
 「そうか。もう大丈夫なのかい?」


 邦夫は頷く香奈の背中をそっと押し、ひとりの男性と向かい合った。


 「こちらはね、香奈……」


 婿探しの続きらしい。邦夫は新たな男性に香奈を紹介しはじめた。
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