極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
置き去りにされた恋と突然のお見合い


 海里との再会から二週間が経ち、五月も終わりに差しかかった土曜日。香奈は、徐々に威力を増しつつある日差しを日傘で避けながら職場に向かって歩いていた。

 駅から歩いて五分、グレーの重厚な壁に半円のアーチが連なる大きな建物が現れた。ロマネスク建築様式風の外観は一見すると美術館のようにも見え、遠くからも目を引く。
 広い公園も有する図書館の一階にはカフェも併設され、休日には整備された景観を見ながら読書を楽しむ人の姿が多く見られる。土曜日の今日も賑わいを見せるに違いない。

 (いいお天気だし、今日も忙しくなりそうね。頑張ろうっと)

 自分を鼓舞しながら館内に入り、同僚たちと挨拶を交わし合う。


 「凪子(なぎこ)さん、おはようございます」
 「おはよう、香奈ちゃん」


 先に出勤していた森嶋(もりしま)凪子がにこやかに挨拶を返してくる。
 長い髪をひとつにしっかり結び、黒縁のオーバルメガネがトレードマークの美人である。いかにも優等生っぽい見た目とは裏腹に気さくな女性だ。
 現在三十五歳の凪子とは、彼女が新卒で働きはじめたときからの付き合いである。当時中学生だった香奈は、凪子の手伝いとして企画を進めたこともあった。
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