極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
でも、今度こそ終わりにできる。海里は柚葉と結婚するのだから。
本当の意味で永遠に手が届かない人になったのだ。
開館とともに徐々に人が増えていく。学校が休みのため、子どもの姿もちらほらあった。
背表紙の分類に従って書架を行ったり来たりしていると、不意に四年生くらいの女の子が香奈に声をかけてきた。
「すみません、本を探してるんですが」
まだ幼いのに声のトーンをしっかり落とすマナーに感心しつつ、抱えていた本をいったんカートに置く。すぐさまその場に屈み込んで彼女に目線の高さを合わせた。
「こんにちは。なんて本かな? タイトルか作者名はわかる?」
香奈が質問すると、女の子は「えっと……」とひと呼吸置いてから続ける。
「少し前の土曜日に、お姉さんが小さな子たちに読み聞かせしていた本です」
「聞きに来てくれていたの?」
「はい」