極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
そんなに待ち焦がれなくても、ミレーヌのケーキさえあればいつでも駆けつけるのにと現金なことを考えてクスッと笑う。
リビングに入ると、邦夫と母の由美子はベージュ色のレザーソファーに並んで座っていた。
父と同じ歳の由美子は、つい最近ミディアムからショートにヘアスタイルを変更したばかり。五十代後半にはもともと見えないが、さらに若返ったため、この前は外出先で香奈と姉妹に間違われてご満悦だった。
大きな目は香奈が引き継いだ遺伝子である。
「おお、来たか来たか」
「おかえり、香奈」
ふたりがうれしそうに出迎える。
「ただいま」
「まぁ座りなさい。深優も」
邦夫が向かいのソファを手で指し示す。
「香奈を呼びつけるには、やっぱりミレーヌのケーキだな」
「そうね、あなた」
「物で釣らなくても、ちゃんと来ますから」