極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 神殿さながらの太い柱を左右に見ながら、なんとはなしに足を進めてアーチ形の大きな窓までやってきた。そこからは整然と手入れされた庭が見え、ライトアップを施されたパームツリーやブーゲンビリアが美しい。

 (たしか、あの向こうにはプライベートビーチがあるってフロントの人が言っていたような……。ちょっと行ってみようかな)

 島には昼過ぎに到着したが着替えなどで忙しなく、ホテルの敷地内を散策していない。高校三年生の香奈は夏期講習があるため、明日の朝にはここを発たねばならず、今を逃したらせっかくの海も見られないだろう。

 足取りも軽く、庭に続く自動ドアから外へ出た。
 瞬間、波の音が迫り、潮の香りに包まれる。湿気を帯びた風が、頬と肩に下ろした髪を撫でていった。

 芝生に等間隔で敷かれた大きな石を頼りに、パームツリーの間を縫っていく。リズムよく足音を立てて進むと、突然目の前が開けた。


 「わぁ」


 思わず声が出る。白い砂浜と深い緑色の海だ。満ち潮なのか、波打ち際はすぐそこ。
 今年の夏は塾通いで終わる予定のため、今シーズン最初で最後の海だと思うと気持ちが弾む。昼間だったら青く輝く海が見られたのにと残念だ。この島の周りは、日本でも屈指の透明度を誇るというのが、リゾートの謳い文句らしい。
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