極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 ふたりが声を大にする。そこまで言う人なら会ってみるのもいいかもしれない。
 結婚に興味が湧いたというよりは、両親を安心させたかった。


 「お相手は、この前のパーティーで会った人?」


 次から次へと紹介されたため、もはや誰が誰だかわからない。
 そもそも香奈は終始うわの空だった。


 「いや、あのときは会ってないんだが、遠目で香奈を見て気に入ってくださったらしく、つい先日私に連絡があったんだ」


 邦夫が喜々として報告する。

 (遠目で見て私を気に入った……?)

 頭の中にはてなマークがいくつも並んだ。

 あの場にはほかにも令嬢はたくさんいて、綺麗な人たちばかりだったのにと不可解でならない。遠くから見ていたのなら、べつの女性と間違えたか、もしくは極度の近眼か。


 「八雲さんっていうんだ」


 邦夫の口から飛び出した名前が、香奈の心臓を飛び上がらせた。
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