極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
あの夜、香奈はたしかにそんな会話を聞いている。それに当時から付き合っていたふたりが別れたのなら、あんなに自然な感じで話せるだろうか。
それに香奈は当時、彼に振られている。なぜ今頃、振った相手に結婚を申し込むのか。
不可解すぎる縁談が香奈を大きく混乱させた。
「香奈も驚いたのね」
「そりゃそうだろうよ。飛ぶ鳥を落とす勢いのYAGUMOの創始者から見染められたんだから。さすが私の娘だ。よくやったぞ、香奈」
邦夫は軽く拳を握り、胸の前で振った。
「ねえ、お父さん。八雲さんって、結婚が決まっていたりしない?」
水を差すような質問だとわかっていても聞かずにはいられない。両親は不思議そうに顔を見合わせた。
「そんな話があったら香奈に結婚なんて申し込まないでしょう?」
「母さんの言う通り。八雲さんにそんな相手はいないだろうよ」
たしかにそうである。海里は、婚約者がいながらべつの女性に結婚を持ち掛けるような不誠実な人ではない。