極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 その後の夕飯は味わうどころでなかった。
 胸はずっとドキドキし通し。献立は香奈の大好きなホタテの貝柱の炊き込みご飯だったのに、喉を通らなかったのが残念だ。

 ひとりで暮らすマンションに帰り着いたものの気持ちが落ち着かず、香奈は部屋の中をうろうろ歩き回っていた。

 実家から歩いて十分の距離にあるマンションは、父の強い希望によりセキュリティが万全である。2LDKは最低ラインとも言われたが、自分で家賃を払いながら生活するには1DKが限界。そもそも、ひとりで暮らすのに部屋数はそこまでいらず、香奈にしてみればベッドと本棚さえ置ければ十分だ。

 歩き回るのにも飽き、ドレッサーの椅子に座った。なんとはなしに備えつけのジュエリーケースからあのイヤリングを取り出し、顔の前で揺らして眺める。

 (海里さんは、どうして私と結婚しようと思ったんだろう)

 お見合いの話を聞いてから数時間経過してもなお、頭と心が状況に追いつかない。
 なにしろ香奈は高校生のとき、彼に振られているのだから。

 それなのになぜ。

 いくら考えても答えは見つからない。
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