極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
海里は手を伸ばし、香奈のノートに走り書きをした。
ただ見ていただけとは当然言えない。機転を利かせて〝ここの意味がわからなくて〟と彼の文字のそばに書き、英語の長文読解を矢印で指し示した。その部分で止まっていたのは事実だが、咄嗟の嘘である。
海里が〝見せて〟と書いたため、香奈は問題集を彼のほうに向けた。
すぐに読み解いた海里が、問題集にさらさらと解説を書いていく。その文字の美しさに見惚れ、彼の聡明さに感心し、ドキドキと高鳴る胸に手をあてる。
いったい何度、鼓動を弾ませればいいのだろうと気が気でなかった。
それから海里とは図書館でよく会うようになった。
受験勉強と卒論製作。やることは違っても、そこで一緒に過ごせるだけでうれしかった。
優秀な彼に勉強を教わることも多く、香奈のモチベーションはぐんぐん上がり、比例して模試の点数も上がっていく。
『よくできたな』
彼に褒められたくて、頭を撫でられたくて必死に勉強した。
アイスクリームが唐突に食べたくなり、参考書を広げたままふたりで近くのコンビニに足を伸ばしたこともある。