極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 もどかしさを募らせていたあるとき、図書館でいつものように海里とふたりで勉強していると、思わぬ人物が現れた。あのパーティーのと

 き、ビーチに海里を呼びにきた女性である。


 『海里くん、いつもここに来てるって言ってたから来ちゃった』


 そう言って笑う彼女は、あの日のようにとても美しかった。
 香奈の存在に気づき、『……こちらはどなた?』と訝しむ。〝どうしてふたりで?〟と疑惑めいた眼差しだった。

 (この人、海里さんを好きなんだ)

 そう悟ったときに初めて、香奈も自分の気持ちに気づいた。もしかしたら海里と初めて会ったときから恋心は芽生えていたのかもしれない。

 淡く、今にも消えてしまいそうなほど儚い想いだったとしても、あの海でたしかに生まれ、密かに息づいていたような気がする。

 それからというもの、柚葉はたびたび海里に会いに図書館を訪れた。卒論に取り組む彼の隣で本を読んだり、たまに香奈の勉強を眺めたり。ふたりだけの聖域を侵されたように感じて悲しいのは、たぶん香奈だけ。海里はなにも感じていなかっただろう。
 そもそも論で、恋人でもない香奈に彼をひとり占めする権限はない。
 悲しい事実に気づき、ショックが輪をかけた。
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