極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 話によると、柚葉は香奈よりひとつ年上の大学一年生で、海里とは幼馴染だという。真司の情報では、マーケティング会社の社長を父に持つ令嬢らしい。
 小さい頃にはなにをするにも海里が一緒だったと彼女から聞き、羨ましさと少しの妬ましさが入り混じる。救いは、ふたりが恋人同士ではないことだった。

 香奈にもまだチャンスはある。そう思いながらも、今は受験に集中するときだと恋心をなんとか押し込めた。恋愛にうつつを抜かして受験に失敗したら、それこそ海里に呆れられ、最悪の場合嫌われるだろう。

 そうして年が明けた二月初旬、香奈は見事、第一志望の大学に合格。海里も卒論をほぼ仕上げ、図書館でふたり、ウーロン茶で祝杯を上げた。
 もう恋心を隠しておく必要はない。人生初の告白をしようと、深優に相談しながらバレンタインデーを待った。想いを打ち明ける絶好の機会を狙ったのだ。

 ところが海里はそれ以降、図書館に姿を現さなくなった。香奈は来る日も来る日も足を運んだのに、彼は来なかった。

 卒論が完成したため、通う必要がなくなったのは一目瞭然。彼に会えるかもしれないと時間を見つけて通っていた自分と、彼との温度差を痛感せざるを得なかった。

 しかも困ったことに、香奈は海里と連絡先を交換していなかった。いつか教えてもらおうと思いつつ、なかなか言い出せずにいたのだ。図書館へ行けば会えたため、今は十分だと我慢していた。
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