極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
なにより愕然としたのは、その理由だ。柚葉と付き合うから、ほかの女の子のチョコレートは受け取れないと断られたと言うのだ。たとえそれが義理であれ、お礼であれ、恋人の柚葉を傷つけたくないからと。
海里のそんな真摯なところが恨めしかった。せめて受け取ってくれてもよかったのにと。
しかし、よく考えてみれば、それは当然の結果。なにしろ香奈は、彼から連絡先すら教えてもらえなかったのだから。
橋渡しをしてくれた真司の苦しそうな顔は今でもよく覚えている。
『ごめん』
真司が悪いわけではないのに何度も謝った。
『やだな、真司くんが謝らないで。私こそ嫌な思いをさせてごめんね』
香奈が謝罪すると、真司はますます申し訳なさそうにしていた。
図書館で会ううちに仲が深まったと思っていたのは香奈だけで、彼にしてみれば彼女候補はもちろん、友達でもなかった。そんな香奈の想いなど受け取るはずがない。
完全にひとり相撲。香奈は勝手に盛り上がり、舞い上がっていただけだったのだ。図書館で邪魔者だったのは、柚葉ではなく香奈だった。
香奈の苦い初恋は、こうして幕を下ろした。