極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 海里がアメリカに旅立ったと聞いたのは、それから二カ月経過してから。恋人の柚葉はどうしたのだろう、一緒に行ったのだろうかと気になったが、香奈が心配するのはお門違い。もう忘れようと、心にふたをして厳重に鍵をかけた。

 その海里が再び香奈の前に現れ、なぜか結婚を迫っている。

 理由がわからず、でもかき乱された心は彼を拒絶できず、お見合いの日を待つ以外にない。
 イヤリングをドレッサーの引き出しにしまい、本棚の隅に本と一緒に立てかけてある英語の問題集を手に取る。
 ぺらぺらめくると、すぐに海里の走り書きを見つけた。高校生のときに海里が教えてくれたのものだ。ほかの参考書や問題集は処分したのに、これだけはできなかった。


 「海里さん、どういうつもりなの?」


 その文字に問いかけたところで、当然ながら答えは返ってこなかった。
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