極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 不可解に思いながら〝どうかしましたか?〟と目で尋ねるが、ニコニコしながら手でカウンターのほうを指し示すだけ。
 依頼している修理業者か、備品の納品業者か。あれこれ考えながらカウンターに向かうと、そこにいたのは真司だった。バレンタインデーのとき、海里に橋渡しをしてくれた先輩である。

 一重瞼に細く通った鼻筋がクールな印象だが、癖のある柔らかそうな髪がそれを和らげている。高校時代、後輩の女子たちから『カッコいい!』と人気だった。
 ネイビーのスーツのジャケットを腕にかけ、ハンカチで額の汗を拭っている。館内にいるとわからないが、外は暑いようだ。


 「よっ」


 顔を出した香奈に気づき、彼が軽く手を上げて挨拶する。


 「真司くんか」
 「なんだよ、そのガッカリした反応は」
 「違うの。業者さんかと思って」


 海外出張と聞いていたから、余計に真司だと思わなかったのもある。
 真司とは、彼が高校を卒業したあともたまに数人でカラオケや食事に行ったものだ。大人になった今でも、こうしてたまにふらっと現れては香奈をランチに誘う。
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