極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
真司が初めて香奈を名指してやってきて以来、凪子はしばらくの間、彼を香奈の彼氏だと勘違いしていた。
違うと知ってからも、『彼のほうは香奈ちゃんに気があると思う』と言い続けて久しい。何度否定しても、その見解を変えるつもりはないみたいだ。
「出張から帰って真っ先に会いに来たってのに、それはないだろ」
「ごめんね。いつマレーシアから帰ったの?」
不満そうに目を尖らせた真司に、香奈は慌てて両手を合わせ謝った。
真司は近くに本社ビルがある商社勤めのエリートで、海外出張はちょくちょくある。先々月はタイだった。
「昨日の夜。そろそろ昼だけど一緒にどう?」
腕時計をたしかめると、間もなく十二時になるところだった。
「うん、行く。みんなに言ってくるからちょっと待ってて」
香奈はいったん奥に戻り、職員たちに声をかけてからバッグを手に取る。凪子に「ごゆっくり」とにっこりされたのは言うまでもない。
エントランスにいた真司と合流し、外へ出た。