極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
昔の思い出に浸っていたときだからなおさら。一瞬、過去と現在が混在し、時間軸を見失った。
「大丈夫?」
背中をトントンとしつつテーブルにあった紙ナプキンを手渡すと、真司は涙目でそれを受け取った。
「……八雲さん、アメリカから帰ったのか」
頷いて答える。真司も知らなかったようだ。
「パーティーでなにか話した?」
紙ナプキンで口元を拭いつつ、横目で香奈を見る。
「お互いの近況とかちょこっとだけ」
「近況? ……それだけ? 八雲さん、ほかになにか言ってなかったか?」
「うん、特には。あ、『岩井はどうしてる?』って聞かれたけど」
「で、なんて?」
真司はなぜか焦ったように先をねだった。