極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです～私、振られたはずですよね？

　香奈が海里に失恋したのは、真司もよく知る話だ。失恋どころかチョコレートを受け取ってももらえなかった。甘酸っぱいを通り越して苦い過去である。


　「あ、ああ……そうだよな」


　真司は小刻みに頷いた。目を左右に揺らし、なにやら考え込んでいるようにも見える。

　（真司くんも混乱してるんだよね。自分が橋渡ししたから、事情はよく知ってるだろうし）

　それも無理はないと香奈も頷き返す。


　「あのさ、香奈……」
　「うん、どうしたの？」


　やけに重々しく口を開いた彼を見た。


　「……あぁ、いや……なんでもない」


　頭を振って否定する目が泳ぐ。なにか言いにくいことでも抱えているのだろうか。


　「海里さん、柚葉さんと付き合ってたんだよね？」
　「そうだと思う。っていうか、そうだな」