極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「両親を納得させるために〝結婚〟が必要なら、べつに八雲さんじゃなくてもいいよな」
「私に彼氏がいないのは真司くんが一番よく知ってるでしょ」
初恋が無残に散ったあと、恋愛は一度も経験していない。大学生のときに一度だけ告白されたものの、その気になれずお断りした。
図書館の男性職員は全員既婚者。香奈は利用客とも比較的話し、その中には同年代の男性もいるが、あくまでも職員と利用客である。
「……じゃあ俺とか」
「えっ!? いきなりどうしたの?」
真司がぽつりと呟いたひと言に驚き、声が脳天から出た。
「結婚相手に困ってるみたいだから言っただけ。そんな驚く必要ないだろ」
不満そうに顔をしかめ、コーヒーをズズッとすする。最後にズコッと音を立て、真司は空になったグラスを自分から遠ざけた。
「冗談はやめて」