極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
結婚する理由
日曜日の午後、香奈は実家のリビングで大きな姿見の前に立っていた。
今日はいよいよ海里とのお見合いが執り行われる。
母の由美子行きつけのサロンから出張してきたスタイリストにより、すでにヘアメイクは完了。ただ今、着付けの真っ最中である。
腰紐をキュッと結ばれ、息が詰まる。
「きつかったかしら? このくらいにしておかないと着崩れしちゃうのよね」
「いえ、大丈夫です」
なんとか息を吐き出し、答えた。おかげで文字通り身が引きしまる思いだ。
スタイリストが香奈に手早く着物を着せていく。薄紅色の生地に小さな桜が描かれた訪問着は、由美子が以前からこの日のために用意していたものである。
「素敵! やっぱりお母さんの思ったとおり。香奈にはこの柄が似合うと思ったのよ」
由美子は香奈が着物を羽織ったときから絶賛の嵐。香奈の周りをぐるぐる歩き、遠目で見たり近くで見たりと忙しない。帯を締め終え、完成したときには手を叩いて喜んだ。
その騒ぎを聞きつけた父も加わり、「やっぱり私たちの娘だ」と大いに満足そうだ。