極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「お待たせして申し訳ありません」


 父親は海里のように背が高く、ロマンスグレーのヘアがダンディな印象を醸し出す。彫りの深い目鼻立ちは、ヨーロッパの彫刻のようだ。
 世界的に有名なファッションデザイナーだけあり、ブラックスーツに赤をベースにしたカラフルな柄のネクタイという組み合わせがファッショナブルである。


 「いえ、私どもも少し前に到着したばかりですから」


 邦夫が向かいの席を手で指し示し、着席を促す。
 香奈の前に座った海里を見て、小さく鼓動が跳ねた。
 ネイビーのスーツに薄いブルーのシャツを合わせ、同じくネイビーとオレンジのストライプ柄のネクタイは遊び心がほどよくあって素敵である。

 そのまま目線を上げて彼と目が合ったため、咄嗟に俯いた。彼が笑った気配がして情けない。

 ゆっくり顔を上げ、今度は彼の隣に座る薄紫の着物を着た母親に視線を移した。

 (あれ? どこかで会ったことがあるような気が……)

 切れ長の目元に凛とした雰囲気の彼女を凝視する。
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