極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
海里はふたりの遺伝子をちょうど半分ずつもらい受けたようだ。どちらか一方ではなく、ちょうどいい塩梅で足して二で割った容姿をしている。
「この度は大変結構な話を頂戴しまして、妻と娘共々、この上ない喜びでいっぱいです」
「こちらこそ、かの有名な飲料メーカーのご令嬢とのご縁、誠にうれしく思います。しかも妻が香奈さんとすでに出会っていたというんですから」
「いやはや、まったく驚きました。これも神のお導きなのでしょうね」
神様まで飛び出し、たいそうな話になったが、香奈も内心なにかの手引きがあったように思えてならない。海里との間に何度となく偶然の出会いがあったから尚更だ。
互いの父親による形式的な挨拶のあと、先付に夏トマトの蜜煮が運ばれてきた。
青い小皿にトマトの赤が映ええ、出汁のジュレが照明に照らされて淡い光を放つ。
「香奈さんは図書館にお勤めだとか」
「は、はいっ、司書として働いて五年目になります」
彼の母、恵美に話しかけられ声が上ずる。もっとしっとりと返したかったが失敗した。