極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?

 「ありがとうございます」


 すぐに手は離れ、彼のあとをしずしずと追う。
 整然と手入れされた庭は、計算されたような完成度だ。アジサイの花が終わると、次はサルスベリだろうか。その木は雨を待ち、葉をめいっぱい広げている。

 海里は池に架けられた橋の手前で振り返った。


 「綺麗だな」
 「ほんとに綺麗な庭ですね」


 大都会のど真ん中にいるとは思えない光景だ。
 大きく頷いて同意したが、海里はクスクス笑いだした。


 「香奈が綺麗だと言ったんだよ」
 「えっ」


 唐突に褒められたため目を瞬かせる。動悸まで激しくなった。


 「馬子にも衣裳?」
 「なっ……」
 「冗談だ。よく似合ってる」
 「もうっ、なんなんですか」
< 99 / 292 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop