極上CEOの執愛に今にも陥落しそうです~私、振られたはずですよね?
「ありがとうございます」
すぐに手は離れ、彼のあとをしずしずと追う。
整然と手入れされた庭は、計算されたような完成度だ。アジサイの花が終わると、次はサルスベリだろうか。その木は雨を待ち、葉をめいっぱい広げている。
海里は池に架けられた橋の手前で振り返った。
「綺麗だな」
「ほんとに綺麗な庭ですね」
大都会のど真ん中にいるとは思えない光景だ。
大きく頷いて同意したが、海里はクスクス笑いだした。
「香奈が綺麗だと言ったんだよ」
「えっ」
唐突に褒められたため目を瞬かせる。動悸まで激しくなった。
「馬子にも衣裳?」
「なっ……」
「冗談だ。よく似合ってる」
「もうっ、なんなんですか」