恋とキスは背伸びして
「すっごく素敵だったね、卓」
「ああ、そうだな」
「ねえ、カップル向けの客室にプラネタリウムの貸し出しをするのってどうかな。そういうのあるでしょ?ベッドルームの天井に映し出すプロジェクター。どう思う?」
「うん、いいと思う」
「そう?ちょっと調べてみようかな。おもちゃっぽくなくて、本格的なのがあればいいな」
「そうだな」

すると、ん?と美怜が首を傾げて顔を覗き込んできた。

「卓?どうかした?」
「え、なんで?」
「なんかちょっと元気ないみたい」
「そんなことないよ」

美怜の視線から逃げるように、卓は前を向いて歩き出す。

「それで?次はどこへ行くの?」
「えっとね、このすぐ下の階に、プラネタリウムに合わせて星空の写真展やってるんだって。それを見てからランチにしようか」
「分かった。エスカレーターで下りよう」

一つ下の階に下りると、写真展の会場の入り口で卓は入場券を二枚買う。

また財布を取り出そうとする美怜を手で制して、中へと促した。

「ここの雰囲気もいいね。ネイビーの幕で会場全体を装飾していて、照明も控えめな間接照明で」

職業病でまたしても美怜はまず内装をチェックする。

会場の外のざわめきを消すように、オルゴールの音楽がゆったりと流れていた。

「写真も素敵。見て、天の川よ」

美怜は優しい表情でじっくりと写真に魅入っている。

卓は写真よりもそんな美怜に釘づけになっていた。

ふと美怜の左隣にいた男性が美怜を振り返り、じっと見つめたあと近づいて来ようとする。

「美怜、あっちも見よう」

卓は美怜の肩を抱くと、男性から遠ざけるようにその場を離れた。
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