恋とキスは背伸びして
バレンタインデー
連日、客室のリニューアルの為にルミエール ホテルに向かう日が続く。
「悪いね。もう少ししたら現場スタッフに全て任せられると思うんだけど」
行きの車の中で成瀬がハンドルを握りながら、美怜と卓に言う。
「遅くとも来週末には現場スタッフに引き継ごう。そのままバレンタインデーまでは彼らに任せる。カップル向けの客室が全室完了したら、次はファミリールームに着手するから、そこからはまたしばらく通うことになると思う」
「はい、承知しました」
美怜と卓は頷き、十時から十五時までは毎日ホテルで現場に立ち会う。
日に日に作業スピードも上がり、一月の最終週からは現場スタッフに任せられるようになった。
そして予定よりも早い二月十日、全てのカップル向けの客室リニューアルが無事に完了した。
「ありがとうございます。お陰様でバレンタインデーにはカップルのお客様に新しい客室で過ごしていただけます」
倉本に感謝され、美怜達も嬉しくなる。
「滞りなく完了してホッといたしました。次はファミリールームですが、予定は前倒しした方がよろしいですか?」
「いえ、既にこちらのスタッフのシフトを組んでしまいましたので、予定通り来週からでお願いいたします」
「かしこまりました。では本日はイベント会場の装飾が終わり次第、失礼させていただきます。また来週伺いますね」
「はい。本日もありがとうございました。しばしの休息になりますが、来週までどうぞゆっくりなさってください」
倉本と別れると、美怜達三人はイベント会場へ向かった。
そこでバレンタインデー前日と当日に、カップルがチョコレートケーキを作れるイベントが予定されている。
美怜は早速、用意したたくさんのハートの風船やピンクと赤のテーブルクロスなどで会場を飾っていった。
記念写真が撮れるブースも作り、背景も明るくカラフルに仕上げる。
「うーんと、ちょっと実際の写真写りを確かめたいので、このパネルの後ろに並んでもらえますか?」
美怜がパネルの後ろに置いてある椅子に卓と成瀬を促す。
「パネルの前に置いてあるこの台に、カップルのお二人が作ったばかりのケーキを置いて、記念写真を撮れるようにします。えっと、本部長。ちょっとこれを左手で顔の横に掲げてください。卓は右手でこれを」
言われるがままに、二人はハート型の小さなボードを顔の横で持つ。
「いいですね。では撮ります。はい、チーズ!」
カシャッとスマートフォンで撮影すると、すぐに画面に目を落とし、美怜は楽しそうに笑う。
「よく撮れてる。あはは!」
あはは?と、成瀬と卓は顔を見合わせた。
「ちょっと、結城さん。その写真見せて」
成瀬が手を差し出すと、美怜は、え?いえ、これは…とスマートフォンを隠そうとする。
「なに?なんで隠すの?」
詰め寄ろうとすると、後ろで卓が「あー!」と叫んだ。
振り向いた成瀬は、卓が手にしているボードを見て絶句する。
先程二人で顔の横に掲げたハートのボードの表面。
ピンク色になったそこには『LOVE』と『SWEET』の文字が躍っている。
つまりさっきの写真には、二人の間にこの文字が…
「結城さん!今すぐ消去して!」
「え、どうしてですか?これも何かの記念に」
「なんの記念だよ!頼むから消して!」
「サンプル画像に使わせていただきますので」
「ぜっっっったいにだめ!」
美怜に詰め寄る成瀬と、笑顔で身をかわす美怜。
仲良くじゃれ合うような二人を、卓は複雑な心境で眺めていた。
「悪いね。もう少ししたら現場スタッフに全て任せられると思うんだけど」
行きの車の中で成瀬がハンドルを握りながら、美怜と卓に言う。
「遅くとも来週末には現場スタッフに引き継ごう。そのままバレンタインデーまでは彼らに任せる。カップル向けの客室が全室完了したら、次はファミリールームに着手するから、そこからはまたしばらく通うことになると思う」
「はい、承知しました」
美怜と卓は頷き、十時から十五時までは毎日ホテルで現場に立ち会う。
日に日に作業スピードも上がり、一月の最終週からは現場スタッフに任せられるようになった。
そして予定よりも早い二月十日、全てのカップル向けの客室リニューアルが無事に完了した。
「ありがとうございます。お陰様でバレンタインデーにはカップルのお客様に新しい客室で過ごしていただけます」
倉本に感謝され、美怜達も嬉しくなる。
「滞りなく完了してホッといたしました。次はファミリールームですが、予定は前倒しした方がよろしいですか?」
「いえ、既にこちらのスタッフのシフトを組んでしまいましたので、予定通り来週からでお願いいたします」
「かしこまりました。では本日はイベント会場の装飾が終わり次第、失礼させていただきます。また来週伺いますね」
「はい。本日もありがとうございました。しばしの休息になりますが、来週までどうぞゆっくりなさってください」
倉本と別れると、美怜達三人はイベント会場へ向かった。
そこでバレンタインデー前日と当日に、カップルがチョコレートケーキを作れるイベントが予定されている。
美怜は早速、用意したたくさんのハートの風船やピンクと赤のテーブルクロスなどで会場を飾っていった。
記念写真が撮れるブースも作り、背景も明るくカラフルに仕上げる。
「うーんと、ちょっと実際の写真写りを確かめたいので、このパネルの後ろに並んでもらえますか?」
美怜がパネルの後ろに置いてある椅子に卓と成瀬を促す。
「パネルの前に置いてあるこの台に、カップルのお二人が作ったばかりのケーキを置いて、記念写真を撮れるようにします。えっと、本部長。ちょっとこれを左手で顔の横に掲げてください。卓は右手でこれを」
言われるがままに、二人はハート型の小さなボードを顔の横で持つ。
「いいですね。では撮ります。はい、チーズ!」
カシャッとスマートフォンで撮影すると、すぐに画面に目を落とし、美怜は楽しそうに笑う。
「よく撮れてる。あはは!」
あはは?と、成瀬と卓は顔を見合わせた。
「ちょっと、結城さん。その写真見せて」
成瀬が手を差し出すと、美怜は、え?いえ、これは…とスマートフォンを隠そうとする。
「なに?なんで隠すの?」
詰め寄ろうとすると、後ろで卓が「あー!」と叫んだ。
振り向いた成瀬は、卓が手にしているボードを見て絶句する。
先程二人で顔の横に掲げたハートのボードの表面。
ピンク色になったそこには『LOVE』と『SWEET』の文字が躍っている。
つまりさっきの写真には、二人の間にこの文字が…
「結城さん!今すぐ消去して!」
「え、どうしてですか?これも何かの記念に」
「なんの記念だよ!頼むから消して!」
「サンプル画像に使わせていただきますので」
「ぜっっっったいにだめ!」
美怜に詰め寄る成瀬と、笑顔で身をかわす美怜。
仲良くじゃれ合うような二人を、卓は複雑な心境で眺めていた。