恋とキスは背伸びして
「うわー、豪華ですね。とっても美味しそう!」

やがて運ばれてきた三段のプレートスタンドに、美怜は感激して満面の笑みを浮かべる。

一段目にはイチゴタルトやショートケーキ、ショコラやシャーベットなどのスイーツ。

二段目はキッシュやスープ、ローストビーフなどのセイボリー。

そして三段目はひと口サイズのサンドイッチ、ショートブレッドやスコーンとクロテッドクリームが載っていた。

「すごい、贅沢!幸せ過ぎます」
「食べる前から何を言う」
「だって見てるだけでも幸せで」
「じゃあ食べないのか?」
「食べます!」

美怜はどれから食べようかと迷いつつ、綺麗な柄のデザートプレートにあれもこれもと盛り付けた。

いただきます、と食べ始めると、途端にまた笑顔になる。

「美味しそうに食べるんだな」
「だって本当に美味しいですから。本部長もどうぞ」

成瀬もローストビーフを口にして、旨い!と頷く。

「でしょう?どれもこれもすごく美味しいです」
「ああ。それに色んな種類を楽しめるのがいい」
「それがアフターヌーンティーの醍醐味ですよね。欲張りな私には最高のごちそうです。この間も卓…、富樫さんと一緒に出かけた時、迷いに迷ってケーキを三つも頼んでしまって。彼に半分食べてもらいました」

ゴホッと成瀬は喉を詰まらせそうになり、慌てて水を飲む。

「え、君、富樫と二人で出かけたの?」
「はい、二回目の疑似デートで。電車で回れるから二人で行ってきなさいって本部長がおっしゃって。その時にプラネタリウムのアイデアを思いついたんです」
「ああ!あの時の」

なんだ、びっくりした、と成瀬は気持ちを落ち着かせた。

「でも富樫さんも本部長も、甘いものが苦手でなくて良かったです。おかげでこうやってシェアしてもらえますから」

屈託のない笑顔でそう言う美怜を、成瀬はじっと見つめる。

(結城さんは富樫に対して何も気持ちは変わらないのか?そうか、異性の親友は成立するって考えだからか。それなら富樫だけがやり切れない気持ちを抱えていることになるな)

うーん、と難しい顔で考え込むと、美怜が首を傾げた。

「本部長、そんなに迷いますか?大丈夫ですよ、お好きなものをどんどん召し上がってくださいね」
「いや、あのね」

思わず片手を差し出すと、ん?と美怜はまた小首を傾げる。

結局成瀬は、何でもないと言ってまたフォークを手にした。
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