恋とキスは背伸びして
「ねえ、美怜。その、ずっと聞きそびれてたんだけどね」

ルミエールのリニューアルが終わり、ようやくいつものミュージアムでの毎日が戻ってきた美怜に、佳代がロッカールームで控えめに尋ねる。

「バレンタインって、結局どうしたの?」

すると美怜は、ああ、と思い出したように頷く。

「すみません、バタバタして佳代先輩に報告してませんでしたよね。はい、ルミエールに視察に行きました」
「そうなんだ!それは、卓くんと二人で?」
「いえ、本部長も一緒にいつもの三人で。先方にも挨拶できたし、楽しそうなお客様の様子に私まで嬉しくなりました。佳代先輩、ありがとうございました」
「ううん、お礼なんて言わなくていいの。それで、その…。ホテルのリニューアルが終わって、これからは卓くんと会う約束とか、どうしてるの?」
「卓とは、もう会わないです」

えっ!と佳代は目を見開く。

「ど、どうして?」
「そうですね、プライベートの時間を大切にして欲しいので。佳代先輩、疑似デートのプランをありがとうございました。でももう疑似デートも行くことはないと思います」
「そ、そんな。卓くんがそう言ったの?もう疑似デートは行かないって」
「いいえ。でもそう思っているはずですから」

その時、お疲れ様ー!と他のメンバーが入ってきて、美怜もお疲れ様です!と笑顔で応える。

結局佳代は、それ以上美怜と話すことはできなかった。
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