恋とキスは背伸びして
「お客様、ここでドレスに着替えていかれますか?」
「はい。構いませんか?」
「ええ。ではこちらへどうぞ」

案内された更衣室で美怜はドレスに着替えた。

この日の為に購入したドレスは、ハイウエストで切り替えしたネイビーのフレアドレス。

胸元はVの字にプリーツを寄せた、ふわりと軽いエアリーなシフォン生地を重ねてある。

スカートはたっぷりと広がる張りのあるシルクタフタ。

足元は同系色の七cmヒールを合わせた。

更衣室を出ると、まあ!素敵、とスタッフが目を見張る。

「これで大丈夫でしょうか?」

不安そうに尋ねる美怜に、もちろんです!とスタッフは大きく頷く。

「お客様、アクセサリーはどうされますか?」
「アクセサリー!すっかり忘れてました。セミフォーマルってアクササリーも必要ですよね?」
「そうですね。このままですと少し寂しいかと。よろしければ当店でもご用意がありますよ。お試しになりますか?」
「本当ですか?!お願いします!」
「かしこまりました。今お持ちしますね」

スタッフはにっこり笑ってからその場を離れ、正方形のジュエリーケースをいくつか手にして戻って来た。

「こちらはいかがでしょう?」

胸元にキラキラとまばゆいばかりのネックレスを当てられ、美怜は目を見開いた。

「なんて綺麗…。これがセミフォーマルの輝きですか?」
「そ、そうですね。はい」
「ではこれでお願いします!」
「承知しました。セットのイヤリングも合わせてどうぞ」

支度が終わり会計を済ませると、「どうぞ素敵なパーティーを」と見送られる。

外に出て歩き出そうとした時、スマートフォンに着信があった。

表示された名前を見て驚く。

「え、本部長?!」

美怜は急いで通話ボタンをスワイプした。
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