恋とキスは背伸びして
ご令嬢
ホテルの駐車場に着くと、卓はバックでスムーズに駐車させた。

「富樫、なかなか上手いな、運転」

成瀬が感心したように言いながら車から降りる。

「いえ、この車が走りやすくて。楽しかったです」
「そうか、ありがとう。帰りは俺が運転するから、富樫は心置きなくアルコールを飲んでくれ」

そう言って助手席に回り、ドアを開けて美怜に手を差し伸べる。

「足元気をつけて」
「はい。ありがとうございます」

成瀬の手を借りて車から降りると、美怜は卓にジャケットを返す。

「運転ありがとう。はい、ジャケット」
「ああ、サンキュ」

久しぶりに笑いかけてくれる美怜に、卓の心はいつの間にか軽くなっていた。
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