恋とキスは背伸びして
「さてさて今日は、午前中は陶芸体験。お昼は老舗のおそば屋さんに行って、午後はショッピングでーす。張り切ってまいりましょう!」
朝食を食べ終えると、先程の成瀬の寒い空気を払拭するように、美怜は明るく「おー!」と片手を挙げた。
ホテルをチェックアウトし、卓の運転でまずは窯元に向かう。
丸太造りの工房で、まさに職人といった風情のおじいさんが出迎えてくれた。
四人とも陶芸は初めてということで、まずは電動ろくろの使い方を簡単に教わる。
そしてそれぞれ作りたい物を考え、美怜はマグカップ、友香は一輪挿し、卓はビアマグ、成瀬は湯呑みにした。
手にたっぷりと水をつけるとペダルを足で踏み込みながらろくろを回し、粘土を包み込むようにゆっくりと両手を添える。
親指で真ん中にくぼみを作ると、上に引き上げるようにして高さを出し、厚みを薄くしていった。
「粘土がすべすべして気持ちいい!」
「ああ。結城さんの手首を思い出すよ」
「は?本部長。なんですか?それ」
「君の手首もこんな感じですべすべだったから」
「うぎぇ、本部長。ちょっと怖い…」
「なんだと?!」
言い合いながら真剣な顔で作業し、ちょっと不格好ながらも味のある世界で一つの作品ができて満足する。
だが一輪挿しを作る友香だけは、時間がかかっていた。
「あー、また崩れちゃった」
「一輪挿しは高さもあるし細いから、難しいよな」
卓が友香の手元を見ながらアドバイスする。
「もっと上に引き上げて。そう。そしたら今度は両手で包み込んで細くするんだ」
すると、恐る恐る内側に寄せていた友香の両手を、卓が後ろから包み込んだ。
「もっと思い切って細くして」
「え、こんなに力入れて大丈夫?」
「大丈夫だよ。そう、そんな感じ」
何気なく二人の様子に目を向けた美怜は、次の瞬間真っ赤になって慌てて成瀬の背中に隠れる。
「ん?どうかしたか?」
「み、見てください、あの二人!卓が友香ちゃんをピタッとバックハグしながら両手を包み込んで…。まさに『ゴースト』ですよ!」
「よく知ってるねー、そんな古い映画」
「そこは感心するところじゃないです!」
その時「できた!」と友香の明るい声がした。
「うん、いい出来だね」
「良かったー、素敵なのができて。ありがとう、卓さん」
「どういたしまして」
にっこり微笑み合う二人を、美怜は更に顔を赤くしながら口元を手で覆って見つめていた。
朝食を食べ終えると、先程の成瀬の寒い空気を払拭するように、美怜は明るく「おー!」と片手を挙げた。
ホテルをチェックアウトし、卓の運転でまずは窯元に向かう。
丸太造りの工房で、まさに職人といった風情のおじいさんが出迎えてくれた。
四人とも陶芸は初めてということで、まずは電動ろくろの使い方を簡単に教わる。
そしてそれぞれ作りたい物を考え、美怜はマグカップ、友香は一輪挿し、卓はビアマグ、成瀬は湯呑みにした。
手にたっぷりと水をつけるとペダルを足で踏み込みながらろくろを回し、粘土を包み込むようにゆっくりと両手を添える。
親指で真ん中にくぼみを作ると、上に引き上げるようにして高さを出し、厚みを薄くしていった。
「粘土がすべすべして気持ちいい!」
「ああ。結城さんの手首を思い出すよ」
「は?本部長。なんですか?それ」
「君の手首もこんな感じですべすべだったから」
「うぎぇ、本部長。ちょっと怖い…」
「なんだと?!」
言い合いながら真剣な顔で作業し、ちょっと不格好ながらも味のある世界で一つの作品ができて満足する。
だが一輪挿しを作る友香だけは、時間がかかっていた。
「あー、また崩れちゃった」
「一輪挿しは高さもあるし細いから、難しいよな」
卓が友香の手元を見ながらアドバイスする。
「もっと上に引き上げて。そう。そしたら今度は両手で包み込んで細くするんだ」
すると、恐る恐る内側に寄せていた友香の両手を、卓が後ろから包み込んだ。
「もっと思い切って細くして」
「え、こんなに力入れて大丈夫?」
「大丈夫だよ。そう、そんな感じ」
何気なく二人の様子に目を向けた美怜は、次の瞬間真っ赤になって慌てて成瀬の背中に隠れる。
「ん?どうかしたか?」
「み、見てください、あの二人!卓が友香ちゃんをピタッとバックハグしながら両手を包み込んで…。まさに『ゴースト』ですよ!」
「よく知ってるねー、そんな古い映画」
「そこは感心するところじゃないです!」
その時「できた!」と友香の明るい声がした。
「うん、いい出来だね」
「良かったー、素敵なのができて。ありがとう、卓さん」
「どういたしまして」
にっこり微笑み合う二人を、美怜は更に顔を赤くしながら口元を手で覆って見つめていた。