恋とキスは背伸びして
広い店内で真剣に職場の先輩達へのお土産を選んでいた美怜は、ひと通り選び終わって、ふう…と顔を上げた。

キョロキョロと辺りを見回すと、入り口の近くにいる卓と友香を見つける。

「友香ちゃーん、卓…」

思わず呼びかけた声が小さくなる。

友香と卓は、見つめ合って楽しそうに微笑んでいた。

(な、何あれ?ハートマークがほわーんと浮かび上がってそうな雰囲気!)

二人に背を向けて頬に両手を当てていると、「ここにいたのか、探したよ」と成瀬がやって来た。

「お、富樫もあっちにいるな。おーい、とが…」

美怜は慌てて成瀬の口を手でふさぐ。

「ふがっ!な、何?急に」
「しーっ!本部長、呼んじゃだめです」
「え、なんで?」

美怜は成瀬の右肩に手を載せると、背伸びをして耳元でささやく。

「さっき、あの二人ラブラブな雰囲気だったんです。だから邪魔しちゃだめです」

そう言うと成瀬の腕を取って、あっちに行きましょ、と歩き出す。

分かった、と成瀬も頷き、二人は卓と友香から離れる。

その後ろ姿を見ていた友香が、今度は顔を赤らめた。

(み、美怜さん!今、成瀬さんの肩に手を置いて、背伸びしながらほっぺにチューを…)

思わず両手で頬を押さえると、どうかした?と卓が尋ねてきた。

「いえ!何もないです。えっと、あっちのお土産見に行ってもいいですか?」

友香は友香で、卓の腕を取り、美怜達と反対方向に向かった。
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